2004年3月20日

仮設劇場デザインコンペ展示会

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昨日、仕事が終わってから梅田の毎日放送1Fギャラリーへ「仮設劇場デザインコンペ展示会」を見に出かけた。
昨年募集していたデザインコンペの1次選考に残った14点の作品が展示されている。
3月16日に第2次公開審査会が行われていたので、大賞受賞作もすでに決まっている。
その作品は実際に2005年に仮設劇場として期間限定で作られるらしい。
かなり期待していて、仕事が終わった後に車を飛ばして会場へ行ってみたのだけれど・・・

募集している時からおそらく、関西で活躍する舞台美術家や劇団など馴染みのある人達も参加しているのだろうと思っていたけど、展示されている作品は全て演劇関係者ではない、建築設計事務所や建築専攻している大学生などの作品しかなく、どれを見ても頭に疑問符しか浮かばない作品ばかりだった。

もしかしたら、応募作品の中には演劇関係者がいたのかも知れないけど、なぜ選ばれた作品全てが設計事務所などの建築に関してのプロばかりになったのか?
確かにプロの仕事なので模型も図面も見栄えのするものではあるが、誰一人、劇場を理解していないのでそのデザインはほとんど芝居の作り手を無視したものになっている。

よく我々が実際に仕事をする劇場で不可解な構造を目にする事がある。
舞台照明の観点から見て、じゃまとしか言えない造形、スポットを配置する位置の悪さなど、そのほとんどがデザインを優先されていて舞台照明を理解していない。
劇場を設計する人はデザインされた空間を作る事はうまいかも知れないが、舞台を知らないのでその人に作られた劇場は我々にとっては欠陥としか言えない。
CL(客席上から舞台へ照明を当てる場所)から舞台奥へ明かりが当たられないというとんでもない劇場、ホールが多数存在する事実!

そんなとんでもない現実がまさか小劇場のために作られる仮設劇場へもやってくるとは夢にも思わなかった。

今回の展示作品もデザインだけが独り歩きした自己満足でしかないものばかりだった。
そのデザインも既存の劇場とは違ってはいるが、まったく新しい創造ではなく、すでにある形をもっともらしく描かれているだけである。

芝居を見る空間は芝居を見るべき空間であって他のなにものにもならない。
絶対条件で劇場としての最低限の機能、芝居を創作する上で妨げにならない、あらゆる表現方法を受け入れる事が出来る空間を考えた上でデザインされるべきである。

ある作品は舞台と舞台の外の空間の共有をテーマに作っていて、舞台外の音もBGMとして取り入れる事が出来るとあったが、舞台外の音が聞こえるのは多くの芝居にとっては妨害でしかなく、それを取り入れて作る事を前提にする時点で芝居の創作に制限を与えている。
ある作品は球体で壁面を全てホリゾントにしていてそこに映像を映せば新しい空間を作れるとしていたが、映像を投影する場所を考えていない。中央に舞台があればどこに置いても映像の光源が目障りでしかない。
映像をメインと考えればそれはたんなるプラネタリウムとかわりない。
大賞作品はどう見ても劇場のデザインではなく、劇場エントランスのデザインであり、舞台に関しては何もデザインされてなく、また小劇場演劇のためのものでもない。
こんなのがあって中でパントマイムや手品やショーが行われていれば子供たちは大喜びだろう。
またほとんどが音響には観客に聞かせるためにスピーカーが必要で、照明には舞台を照らすスポットが必要である事を忘れている。

おそらく演劇を見る事はあっても演劇を作った事のない人ばかりなので、何が必要なのか知らないのだろう。

これが単なる新しい演劇空間のためのデザインコンペであればそんなに愚痴るつもりはないが、小劇場演劇のための仮設劇場とした定義があり、実際に作る前提があるのでもっと現実的であってほしい。

もっともデザインコンペなのでこれからこのデザインを元に劇場としての機能を付け加えていくのだろう。
その中で劇場としての機能を優先するのか、デザインを優先するのか来年春に大阪に出現する仮設劇場を見てその結果を待とう。

しかし、先にデザインされた劇場があって、その空間を制限された中で演劇を作る事よりも先に創造された演劇のためにそれに合った空間を作る事の方がより重要だと思うのだが。
箱を作ってそれを使えというのは今まで失敗している市町村の文化事業と同じで役所の人はその誤りに未だ気づいていないのか?


既存の概念を取り払って新しい演劇空間を作るためというのがおそらく企画意図だろうと思うが、今必要なのはデザインされた劇場ではなく、演劇をする場所である。
もっと演劇を行える場所があった上でその先に新しい劇場デザインが必要となる。

これで今回の主催の大阪市が小劇場演劇のために十分注力したと自己満足で自己完結して終わってしまう事が一番問題だ。
そうならないでもらいたい。

Posted by seizi at 2004年3月20日 17:57 | TrackBack (0) | [EDIT]
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